2018年のニュース

坂口哲也君がエタノールが相手の心を読む能力を高める仕組みを解明(2018.8.30)
アルコールは古くより社交の場で愛用され、社会性の向上に役立つ嗜好品だと考えられてきましたが、その神経回路メカニズムは明らかにされていませんでした。私たちはマウスを用いた実験にて、アルコールが仲間の痛みに対する共感様行動を促進することを発見しました。さらに、アルコールを投与されたマウスの脳内では、仲間の痛みに応答する神経活動が、実際に自分自身が痛みを受けたときに応答する神経活動と類似することを突き止めました。つまりアルコールは、他者の情動変化を目撃したときに、まるで自身が同じ状況に置かれているかのような脳状態を生じやすくしていると考えられます。本研究により、アルコールが共感を促進する仕組みが示されただけでなく、脳が自身の情動回路を他者への共感のための回路として転用していることが明らかとなり、共感のメカニズムの解明が進展することが期待されます。本研究成果は、2018年8月30日のNature Communications誌(オンライン版)に掲載されました。


野口朝子さんが次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム2018で優秀口頭発表賞を受賞(2018.8.25)
2018年8月25日に福岡大学で開催された次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム2018において、野口朝子さんが優秀口頭発表賞を受賞しました。発表演題は「海馬シータ波を支えるCA1野錐体細胞の閾値下膜電位メカニズム」でした。


小島寛人君が東京大学生命科学シンポジウムでポスター賞を受賞(2018.6.9)
2018年6月9日に東京大学駒場キャンパスで開催された​​第18回東京大学生命科学シンポジウムにおいて、小島寛人君がポスター賞を受賞しました。発表演題は「The CaMKII-TIAM1 signal complex in behavioral memory」でした。


星雄高君が脳浮腫の新たなメカニズムを解明(2018.5.23)
脳浮腫は、脳組織に水分が過剰に溜まることで脳が膨張した状態で、致死率や後遺症の発生率が高いことが問題となっています。星雄高らは東京大学大学院薬学系研究科生体分析化学教室および群馬大学大学院医学系研究科と共同研究を行い、虚血性の脳浮腫において、脳内温度が上昇すること、温度受容体の一つであるtransient receptor potential vanilloid 4 (TRPV4)の活性化が脳浮腫の発生に関与することを明らかにしました。 本研究成果は2018年5月23日のThe Journal of Neuroscience(オンライン版)に掲載されました。


八幡洋輔君が熟慮後の失敗が学習を促進することを発見
ラットに二択課題を解かせたところ、長い潜時をもった誤選択(つまり熟慮後の失敗)を繰り返したラットが良好な成績をあげました。「失敗は成功のもと」と言われますが、本発見は、同じ失敗でも、即断による失敗は学習には有効でないことを示しています。また、たまたま正解した経験も成績とは無関係でした。本発見は、学習の成立過程を知るための一助となるだけでなく、動物の個性を生み出す脳内メカニズムを解明する一端となります。本研究成果は、2018年4月25日のPLOS ONE誌(オンライン版)に掲載され、読売新聞や朝日新聞などのメディアでも紹介されました。


星雄高君と小此木闘也君が日本薬学会年会で学生優秀発表賞を受賞(2018.4.13)
2018年3月25-28日に金沢で開催された日本薬学会第138年会において、星雄高君と小此木闘也君が学生優秀発表賞を受賞しました。発表演題はそれぞれ「社会性ストレスによる体温変化が行動に与える影響の解明」「高架式十字迷路試験におけるマウスの末梢臓器の活動状態と大脳皮質活動の関係」でした。


牧野健一君と小野寺純也君が日本薬理学会関東部会で優秀発表賞を受賞(2018.3.14)
2018年3月10日に慶應義塾大学薬学部で開催された第138回日本薬理学会関東部会において、牧野健一君と小野寺純也君が優秀発表賞を受賞しました。発表演題はそれぞれ「ラットにおける洞察様学習の発見とその解析」「BDNFを介したニューロン・マイクログリア相互作用」でした。


乘本裕明君が睡眠中に脳回路がクールダウンされる仕組みを解明(2018.2.9)
学習するとニューロン同士の繋がりが強まり、脳回路の活動レベルが上昇します。乘本裕明君は博士課程の研究において、睡眠中に発生する脳波の一種sharp wave rippleが、ニューロン同士の繋がりを弱め、脳回路を正常レベルへとクールダウンすることを発見しました。 この現象は睡眠直前にコードされた記憶に関するニューロンには生じませんでした。この発見は睡眠は脳回路をクールダウンしながら記憶情報を整えることを示しています。本研究成果は理化学研究所脳科学総合研究センターの藤澤茂義らとの共同研究として、Science誌(2月8日オンライン版)に掲載され、同誌のPerspectivesに取り上げられほか、日経新聞等のメディアでも紹介されました。


高木敬次郎名誉教授が永眠(2018.1.25)
薬学部設立当時に薬品作用学講座の教授を務められていた高木敬次郎先生が1月25日に亡くなりました。享年102歳でした。高木先生は大正4年11月28日に横浜市に誕生され、昭和14年3月に東京帝国大学医学部薬学科を卒業されました。昭和29年9月に薬品作用学講座の助教授、昭和32年11月に同教授、昭和51年3月に定年退官するまで同職をお務めになりました。昭和49年から昭和50年までは薬学部長を務められて東京大学薬学部の発展にも貢献されただけでなく、日本薬学会第40代会頭、日本薬剤師会第20代会長、日本病院薬剤師会第2代会長も歴任し、薬学界全体を牽引されました。このように薬学界を代表する3つの団体の会長を務められたのは、現在にいたるまで、高木先生お一人です。とくに日本薬剤師会における12年間の会長就任中は、我が国における薬剤師の地位を確立し、現代的な医療チーム体制の基盤をデザインされました。1月27日に目白町教会で葬儀が、3月21日には日本学士会館で偲ぶ会が行われました。


佐々木拓哉助教が即時記憶の保持のメカニズムを解明(2018.1.16)
動物は、現在の作業に必要な情報を一時的に記憶し、その記憶に基づいて作業を実行できます。こうした記憶は、「作業記憶(ワーキングメモリ)」と呼ばれます。本研究では、ラットに迷路課題を解かせることで、作業記憶における海馬-歯状回の役割と神経回路メカニズムについて調べました。その結果、(1)歯状回が海馬神経細胞の同期活動の発生に重要であること、(2)空間作業記憶の保持には、記憶の必要性に応じて、海馬の神経細胞の活動量が適切に制御される必要があること、(3)こうした特徴的な活動には、歯状回が必要であること、が示されました。以上の研究により、作業記憶における海馬-歯状回の役割、そしてその神経生理メカニズムの一端が解明されました。この知見は、記憶すべき項目が短時間に次々と変化していくような環境において、適切に作業を進めるための脳メカニズム解明への布石となります。本研究成果は、Nature Neuroscience誌(1月16日オンライン版)に掲載され、東京大学からプレスリリースされました。




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